トマリヒイロテンジクダイ

スズキ目テンジクダイ科

2021.7.1:投稿



【分布域】八丈島、和歌山県串本、宮古島。
【生息域】サンゴ礁の洞窟の中や根の亀裂の奥深くに隠れている。
【特徴】体は薄い桜色〜緋色。吻はやや突き出ている。その吻から眼を通る黒色の帯が1本。第2背鰭の基底あたりに黒色と白色の斑点が並ぶ(参考写真)警戒心が強く、光を嫌う。稀種。



「レジェンド」

2018年 G.W. 宮古島
前日の夕刻、宮古島入り。翌朝、船着場へ。

今まで乗ったこともないような”素敵な帆船”が停泊していた。
「Tida Again 号」

ワクワクする気持ちを連れて船に乗り込んだ。
船の一角でインストラクターのマサさんが年配の男性と歓談していた。
どうやら現地ショップのオーナーであり、この帆船のキャプテンの方のようだ。

乗り込んだ私を見つけてマサさんが
マ「この人自分で撮った写真で図鑑を作ってるんです」
Cap「そ〜ぅ。 (間) で、何が撮りたいの?」
セ「24°North のHPを見せて頂いたら、他のショップでは見たことがない魚が載っていて、確か〜トマリヒイロテンジクダイって名前だったと思います。出来ればその魚を」
Cap「あぁ〜あれね。あれは僕の名前が付いてるんだよ」
セ「・・・・・」

この時の私、言葉を失っていた。
想像だにしなかった展開。自分の能天気な発言。一番驚いたのは自分だったかも知れない。

宮古島の老舗ダイビングショップ「24°North」(ニー・ヨン・ノース)のオーナーであり、宮古島のダイビングポイントのほとんどを開発した宮古島ダイビング業界の草分け。「レジェンド」渡真利将博さん。

トマリヒイロテンジクダイは渡真利さんが宮古島で初めて発見し、和名としてその名が献名された種。


「地雷を踏む」という言葉がある。
この時の状況で使うのは若干ニュアンスが違うと思うが、、、
器材をセッテイングしながら「ヤバイ!ヤバイ!地雷踏んじゃったよ」と心の中で繰り返し、宮古島の海に入る前から私の心拍数は高止まっていた。


データ詳細

撮影日のアイコン

撮影日

2018.05.05 #699

撮影ポイント

宮古島 通り池

使用機材

Olympus OM-D E-M5 MarkⅡ (M.60mm F2.8 Macro)

宮古島ツアーの1日目
朝の会話は無かったかのように「トマリヒイロテンジクダイ」の名前はその後一切出なかった。

 

それでも私は信じていた。
必ず見せてくれると。

 

2日目の朝、船に乗り込み器材のセッテイングをしていると、レジェンドが皆んなに聞いた。「トマリヒイロテンジクダイを見たい人?」 Rちゃんと私が手を挙げた。
この日の1本目は宮古島を代表する地形ポイント「通り池」に決まった。
エントリー後しばらくアゲインストの流れの中を泳ぎ「通り池」の海面で一旦浮上。(地上から見た「通り池」=参考写真)
今回の宮古島ツアーで記念ダイビングを迎えたのは、私も含めて3人。700本、600本、500本の記念フラッグが並んだ。海面に並んでの珍しい記念撮影。

 

再び潜降し、途中皆んなと別れ、レジェンドに導かれてトマリヒイロテンジクダイのもとへと3人で向かった。
泳ぎながら、自分が人生初の「過呼吸」になっていることに嫌でも気付いた。ボコボコボコ、ヒ〜〜、ボコボコボコ、ヒ〜〜。そんな呼吸をしながら自分に作戦の念押しをした。トマリヒイロテンジクダイの姿を見たら躊躇することなくシャッターを切ること。一瞬で隠れてしまうかもしれないから。

 

過呼吸に陥っている自分のメンタル、肺、心臓。これらをコントロールすることは端から諦めていた。
自分の状況に上から目線で「好きにして!私はトマリヒイロテンジクダイを撮るから!」と突き放して宣言した。

 

到着したのは狭く暗い洞窟。レジェンドが指示棒で奥からお目当てを連れ出してくれた。お〜! 24°North のHPで見た魚が目の前にいる!!
(写真左側、大分収まり掛けた過呼吸の泡が写り込んでいる。通常なら息を止めてシャッターを切るが、呼吸のコントロール不能になっていた)
4〜5枚撮ってO.K.サインを出した。残圧計を見せ、ハンドシグナルで20と伝えた。レジェンドは落ち着いたもの。洞窟から3〜4分泳いで開けた場所に出た所で私にオクトパスをくれた。

 

まるでリードに繋がれた犬のようだと自分の姿を俯瞰してみた。「レジェンドの飼い犬なら悪くない」とバカなことを呑気に考えた。
私の過呼吸は2〜3回シャーターを押した辺りで治っていた。過呼吸の原因は明らかに「何としてもそこそこの写真を撮らねば」というプレッシャーだったのは明白。

 

 

「トマリヒイロテンジクダイ」 紛れもない「稀種」である。
その種の発見者であり、名前が付いている当の本人に案内されて撮った写真。
写真は拙くとも、私のダイビング人生の中での”貴重な思い出”であり、”誇り”でもある。

データ詳細

撮影日のアイコン

撮影日

2018.05.05 #699

撮影ポイント

宮古島 通り池

使用機材

Olympus OM-D E-M5 MarkⅡ (M.60mm F2.8 Macro)

コメント

※メールアドレスが公開されることはありません

CAPTCHA